本文が長いから、早速、始めますわよ。
僕は、このまちに4年ほど関わらせてもらっている。二期工事の終わりの頃かな、2年半前くらいに、このアパートがあるまち『南吹田琥珀街』の長屋の募集をした時の物件紹介文で、このように書いた。
「舞台は、大阪府吹田市南吹田にある、とある街。過去のような未来のような、時空を超えて出現した街。そこでまた何かが起きているらしい。そこでまた新たな何かが産声をあげたらしい。ひとつの新しい時代のような。ひとつのささやかな灯りのような。古い長屋やアパートをリノベーションして、まちに安心感や落ち着きをもたらし、そこで暮らす人々の想いを大切にしながら、ぬくもりや懐かしさを補完するというプロジェクト。」
そう書いた。
過去であり、未来である。じゃないし、過去でもなく、未来でもない、でもない。過去のような、未来のような。パッと見は、昔ながらの長屋が立ち並ぶ、それこそ、時代に取り残された過去のようなまちで、そのハード面は大きく変えずに、使い方、使う人、すなわち、ソフト面を変える事により、そして、まちに琥珀色の照明を加えるコトにより、未来を描こうとした。
このプロジェクトは、言い方は悪いかもしれないけれど、壮大な実験だ。極論、何が正しいかなんていう答えは、誰にもわからないからね。
過去にはあったのに、なくなってしまったモノ、長い年月を経て必要とされなくなったモノ、今の世の中で重要視されなくなって来たモノ。でも、未来の世界ではあった方がいいと思えるモノ。これからの世の中は、こうあってほしいという在り方。
過去からある良いモノや時間をかけて熟成されてきたモノは、ちゃんとアップデートして、現在進行形で未来に連れて行きたい。
そして、何より、みんなが忘れかけている、人、人の生活、人の生命の営みを最優先するという価値観。
もう、これ以上、人が、社会の仕組み、固定概念や常識、どこかの大人の打算、計算の犠牲者にならないように。そして、できる限り、画一化された家や空間に自分たちの生活や暮らし、人生を当てはめるなんて、窮屈な想いをみんなにさせないように。
人がもっと自由に生きられて、人がもっと自然に生きられるように。世の中の一般的や普通と言われる価値観なんかに惑わされずに、自分たちの価値観に誇りを持って生きられるまち。
そういう場所が、そういうまちがあっていいじゃないか?
確かにね、そうは言うものの、この多様化した価値観の世の中の全員には入ってもらえない。この世の全員の受け皿にはなれない。
でも、このまちの目指すところや在り方に共感してくれる人たち、そして、それが一方的な憧れや片想いじゃなく、ちゃんと、その人自身も準備ができている状態で、このまちからも迎えたいと思わせてくれる人たち。
そんな人たちくらいは守りたいじゃない。
そのままでいいんだって。あなたのままでいいんだって。
今、このまちにまた新しい1ページが刻まれようとしている。
今回の主役は「白ゆり荘」昭和44年に建てられた木造2階建てのアパート。
この建物をこのまちがこれから向かうべき方向に合わせてアップデートし、リノベーションした。
大前提として、今回の「白ゆり荘」のリノベーションは、『南吹田琥珀街』の今までにリノベーションしてきた長屋の延長線上にあり、かつ、もう少しライトな価値観の人にも入ってもらえるような建物を目指しているという事。
今までの『南吹田琥珀街』の長屋リノベとまったく同じコンセプトではなく、今までの『南吹田琥珀街』のコンセプトに沿って、そのコンセプトの解釈をもう少し広げたという表現が正しいと思う。
このまちらしい、このまちならではの価値観の拡張をするために、価値観の選択肢を増やすために。
そして、リノベのひとつめのポイントとしては、建物がまちに対して閉じてしまわないために、1階全体が半パブリックエリアとも言えるほど、ほぼ全面ガラス張りとした。まちに開けるように。
また、ガラスはこのまちにふさわしい、未来でも過去でもあれるマテリアルであるというコトもポイントなのです。
もうひとつのポイントは、この建物の元々の間取りは30㎡×12戸でした。そのままリノベするコトも可能だけれど、同じような属性の12人がまちに増えてしまうというコトはまちの生態系を崩しかねない。というコトで、全8戸、ほぼ全室、広さや間取りが違うプランとしました。若者、カップル、新婚さん、家族なんかの住む人、はたまた、店をやっている人、事務所として使っている人、アトリエにしている人、いろんな人が、いろんな使い方をしているまちが自然だと思うから。
何だろうな。
今日までに、この『南吹田琥珀街』と街人、オーナーを含むプロジェクトメンバーが過ごして来た4年という月日。
この「白ゆり荘」のリノベーションプロジェクトに捧げたプロジェクトメンバーみんなの想い、時間。
また、世の中への発信として、この建物のリノベーションに際して、僕は、たくさんのプロジェクトノートを綴って来た。今回の第三期リノベーションだけでも、全八回。また、去る2021年10月10日に「南吹田琥珀街『白ゆり荘』リノベーション完成オープンハウス」を開催させていただいた。
世の中全体の動きからしたら、ほんのわずかな小さな小さな動きかもしれない、僕らの最大限の動きが、一粒の水滴が水面に落ちて、広がる波紋のように、誰かの目に留まり、その人の目から心に伝わる。そして、その人の心から体に伝わり、何かしらのリアクションをしてもらえる。
それが、ここに入りたいという行動に繋がってくれたとしたら、最高じゃないか。
これ以上の喜びはない。
僕は、先日、リノベーションが完成した「白ゆり荘」の写真を撮りに行ったんだな。
アパートの琥珀色の外灯は灯っているものの、肝心の部屋の中に灯りはない。
そうすると、リノベーションがしてある建物であっても、廃墟と大差はないんだよね。
何が言いたいかって言うと、建物は人に使ってもらわないと意味がない。
オーナーを含むプロジェクトメンバー、街人、全員があなたとの出会いを心待ちにしています。
とか言いながら、最後に、ごめんなさい。
この文章を読んでいただいてもわかるように、今回も、やはり、皆様のご存じのただの不動産賃貸仲介というよりは、まちへの採用のような事になります。ですので、手を挙げていただいた方全員にご入居いただけるとは限りません。
それは、入居のミスマッチは、あなた、すでにまちにいる人、まち、みんなが不幸になるからです。難しいかもしれませんが、あなたが求めるモノとオーナー、街人、まちがあなたに求めるモノ。その両想いのみを目指します。
なので、申し訳ございませんが、審査があります。という事で、よろしくお願いします。
最後の最後に、ひとつ。
もし、よろしければ、街人募集ページ、南吹田まちリノベーションプロジェクトの#6、#8、#10、#11を読んでいただけるとうれしいです。
※賃料等諸条件は、まちを一緒に育ててくれる街人募集ページの白ゆり荘に。